店長か店員か知らないけど、多ジャンルに渡ってそれなりにこだわりのあるだろう品揃えだったと思う。
どちらかというと映画が好きだったり音楽が好きだったりの数人の好事家を抱えているのではなく、映画も音楽も好きな一個人の趣味が詰まってるように感じていた。
実際どうだったかはわからないまま。
例えば音楽だと、坂本慎太郎、あぶらだこ、渋さ知らズ、江利チエミ、原田知世などを僕はここで借りた。
スクービー・ドゥーに興味を持って探してみたら近隣ではこの店にしかなかった。
八十八ヶ所巡礼を借りたのもここだったかもしれない。
東京だったらこれくらいの品揃えはそこらにもあるかもしれないけど地方では珍しいと思う。
前職場からは微妙に遠く、現職場でも変に遠回りしないと寄れないため、ここで借りたいものをある程度の目星を溜めてからでないと、という不便さだったけど、好きだった。
映画は音楽に比べるとそれほどでもないけどまあそれなりに地味なものも少しあった。
あとどうやらアダルトビデオもすごかったみたいだ。
僕の名誉のために記しておくが、僕はアダルトビデオを見ない。
僕の人生にアダルトビデオを借りた経験は本当に一切ない。
だからこの店のアダルトビデオに対するこだわりを理解することはできないけれど、毎月千本以上入荷とか、よくわからないのに並々ならぬオーラを感じることはあった。
府中町に唯一のこのTSUTAYAは、安芸郡、広島市、東広島や廿日市まで範囲を広げても出色な存在だったと思う。
配信に押されてレンタルショップが苦境に陥っていることはもちろん承知している。
それでも僕がレンタルしてたのは単に安いからだ。
僕は大体ピンポイントで、このミュージシャンを聴きたい、と思うので、その都度TSUTAYAに行って100円や当日返却の数十円で借りてリップしてた。
もっと音楽好きになればミュージシャン側の収益の事も考え始めるのだろうけど、僕はそこまではいってなかったので、レンタルで充分事足りた。
だからこの店が好きだった。
店長の趣味だとしたら仲良くなりたくはないな、微妙に同族嫌悪的なものを感じる程度に好きだった。
先日、店の前を通るとコーンで封鎖されていた。
一瞬、心拍が上がった。
改装であってくれと願ったけど、果たして2023年6月をもって閉店していた。
くやしい。
30年続けた音楽や映画を借りる習慣も、多分もう終えるのだろうな。
さみしい、ことだと思う。
この店は好きだが、嫌いなのはモザイクだ。
アダルトビデオを借りないのはそういうことだ。
インターネットの隆盛で日本でもモザイク解禁しようぜって声があがって随分経つが、モザイクが消えるより先にレンタルショップそのものが消されるという点も、残念だ。